★★注目ニュース★★ PREVENT、体重の記録率がチャットコミュニケーションによる減量効果を高める

里見将史

2025.05.26

『HealthTechWatch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。

今回注目したニュースはこちら!

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“生活習慣改善支援プログラムにおいて体重の記録率がチャットコミュニケーションによる減量効果を高める可能性を示唆する研究成果を発表”

PREVENTは、Insight Labの活動成果として、モバイルヘルス(mHealth)アプリを使った生活習慣改善支援プログラムであるMystarの参加者のデータを調査し、減量効果に対する体重記録率とチャットコミュニケーション回数には交互作用を認め、体重記録率が一定以上である場合、チャットコミュニケーションの頻度増加がより顕著な減量効果と関連することを明らかにしました (Interact J Med Res. 2025. doi: 10.2196/65863.)。

【Point】
・Mysta参加者のデータを分析し、プログラム期間中の「体重記録率」と「チャットコミュニケーション」の減量効果に対する交互作用について調査

・体重記録率が一定以上の場合に、チャットコミュニケーションの増加が減量効果を強化することが示された

・この成果はmHealthプログラムを構築する際に「ライフログ入力率」や「コミュニケーションの発生」をどのように設計するかという点において示唆のある結果となった

背景と目的

近年、生活習慣病対策としてのモバイルヘルス(mHealth)アプリを用いた生活習慣改善支援が注目されており、中でも「体重記録の頻度」や「医療専門職とのチャットによるやりとり」が行動変容に与える影響が報告されています。しかし、これらの要素がどのように相互作用し体重減少に寄与するのかについては、十分に解明されていませんでした。そこで本研究では、参加者の「体重記録率」と「医療専門職とのチャット量」が体重減少に与える影響、また両者の交互作用効果を検証することを目的としました。

研究成果

本研究では、プログラム開始時のBMIが25.0以上の参加者を対象に分析を行いました。その結果、6か月間における体重変化率には、開始時のBMI、体重記録率、医療専門職とのチャット量がそれぞれ有意に関連していることが示されました。また、体重記録率とチャット量の間には交互作用が認められ、頻繁に体重を記録する参加者ほど、医療専門職とのチャット量が増加するにつれて体重減少効果がより顕著になることが確認されました。

本研究の重要性

本研究において、体重記録という「自己モニタリング行動」が医療専門職とのチャットコミュニケーションの効果を高める「媒介要因」となることが明らかになりました。この結果は、mHealth介入の成功には単なる一方的な情報提供だけでなく、ユーザー自身の積極的な関与が重要であることを示しています。

すなわち、自己記録の習慣化を促し、それを基に個別フィードバックを提供する仕組みを取り入れることが、今後の健康支援アプリ設計において、より効果的な行動変容を促進する鍵になると考えられます。本研究の成果は、このような仕組みを実践的に導入する上で有益な示唆を提供しています。

プレスリリースはこちら(株式会社PREVENT社 2025年5月12日掲載)
 
※記事公開から日数が経過した原文へのリンクは、正常に遷移しない場合があります。ご了承ください。

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『HealthTechWatch』の視点!

今回取り上げたのは、「体重記録率」と「医療専門職とのチャット量」が体重減少に与える影響について調査した研究結果です。

「体重記録率」が高い、記録回数が多い方ことが、体重減少に影響することは一般的に想像できると思います。

今回注目すべきポイントは、「医療専門職とのチャット量」が多い方が、体重減少に影響を与えることが分析からわかったという点です。

医療専門職がサポートする、寄り添うプログラムは多いです。

しかし、この医療専門職の寄り添い、対象者との関係性は、一方通行型の情報提供が中心であって、対象者からの発信、もしくは医療専門職から対象者への投げかけによる反応、リアクションを促すものは、それほど多くないと思います。

それには、医療専門職が応対するための作業負荷の問題が大きいと思いますが、双方向のコミュニケーションに持ち込まず、一方通行型の情報提供が中心になっている要因としては、やはり医療専門職のコミュニケーションスキル頼みになってしまい、コミュニケーションの品質、レベルの統一が図りにくいということもあると思います。

双方向のコミュニケーションに持ち込むためには、質問を含めたやり取りが発生します。

またコミュニケーションの取り方として、対面ではなくチャット形式などのコミュニケーションの取り方に合わせた対応が求められます。

さらに、双方向のコミュニケーションを成立させるためには、対象者がコメント、リアクションしやすくするための配慮、工夫も必要になってきます。

このあたりを含めたコミュニケーションの設計はもちろん医療専門職のコミュニケーションスキルの習得も必要になってきます。

これまで医療専門職にとっては専門知識やノウハウが求められてきましたが、今回の研究結果を見る限り、「医療専門職とのチャット量」が多い方が、体重減少に影響を与えることがわかったということで、医療専門職にとっては、コミュニケーション、とりわけ双方向のやり取りでチャット量を増やすための手法、ノウハウが求められるということだと思います。

特に、プログラム、サービスを提供して対象者を結果に導く上では、医療専門職にとっては専門知識やノウハウだけではなく、コミュニケーションスキルの武器が、今後求められていくだろうと強く感じています。

『HealthTechWatch』編集委員 里見 将史
株式会社スポルツのディレクターとして、主に健康系ウェブサイト、コンテンツなどの企画・制作・運営を担当。(一財)生涯学習開発財団認定コーチ。

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