★★注目ニュース★★ 寿命を延ばすための積極的なアプローチ

『HealthTechWatch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“寿命を延ばすための積極的なアプローチ”
世界の平均寿命は着実に伸びており、世界中で医療が進歩するにつれて、今後も改善が続くと予想される。
2022年時点での日本の平均寿命は約78歳でしたが、2035年には80歳近くに達すると予想される。これは確かに朗報だが、人々の寿命が延びるにつれて、慢性疾患の罹患率も増加している。
長寿の追求は、単に長く生きることではなく、高齢期においても高い生活の質を維持する必要がある。幸いなことに、現代の生物学的システムに関する理解は、より健康な未来に向けてどのように取り組むべきかについて、強力な洞察を提供してくれる。
この記事では、予防ケアを通して患者の健康に積極的に取り組むことの重要性について考察し、寿命の延長に個別化されたアプローチをどのように取り入れていくかを探る。
予防的アプローチを優先する
私たちの体は、人生を通して様々な程度の消耗を経験する。日焼け、捻挫、発疹など、目に見えやすい損傷もあれば、目に見えにくい細胞や組織に蓄積される損傷もあり、健康に同様に大きな影響を与える。
例えば、関節炎、糖尿病、心血管疾患などの慢性疾患は長期間の炎症と関連している。多くの場合、深刻な問題を引き起こすまで何年も無症状のまま進行する。
これらの疾患を予防し、ひいては長期的な生活の質を向上させる最も効果的な方法は、予防医療モデルである。しかしながら、多くの患者は健康であっても受診をためらうことがある。
その理由は、過去の医療トラウマ、経済的な不安、あるいは予防医療のメリットを理解していないことなど様々だ。患者との信頼関係を築くことは、こうした障壁を取り除く上で大きな役割を果たす。
患者ケアにおいては、父権主義ではなく、協働的なパートナーシップとして取り組むことが重要だ。患者と協力し、長期的な健康と自立を促進する予防医学の価値を理解できるよう支援する。
このパートナーシップの一環として、患者が医療トラウマの経歴を持っているかどうか、あるいは医療を受ける過程に影響を与える制度的な不平等があるかどうかを把握することが重要となる。
これにより、医療チームはトラウマ・インフォームド・コミュニケーションを実践し、医療提供者と患者に利益をもたらすより強固な関係を築くことができる。
経済的な懸念も、患者が予防医療を受けるのを妨げる要因となる。2023年には、成人(19~64歳)の約5人に2人が医療費を理由に、医療の一部を延期したり、省略したりしたという報告が数多く上がっている。
予防医療は健康への長期的な投資であることを患者に理解してもらうことが重要だ。医療提供者は、スライディングスケール方式の支払いモデルを導入したり、他のサービスと検査を組み合わせたりするなど、アクセス障壁の低減に取り組むことができる。
多くの患者にとって、データに基づいた具体的な洞察と行動を提供することで、予防医療の価値を認識する助けにもなる。
長寿のために自己管理する
患者が健康を管理できるようサポートするのに、遅すぎるということはない。
私たちの体は驚くほど回復力があり、治癒プロセスを支援する新しい治療法が日々生まれている。患者に自分の体についてより深く理解してもらうことで、医師のアドバイスをより的確に受け止め、問題を引き起こす前にバイオマーカーの異常に注意を払うことができる。
長寿への道に近道はないが、包括的なバイオマーカーパネルは、あなたと患者を正しい方向に導くことができる。最後のマラソンを完走したばかりの方でも、新たな健康の旅を始めようとしている方でも、包括的な血液検査は、医療チームにとって、より長く健康的な人生へと導くための地図となる。
記事原文はこちら(『MedCity News 』2025年6月19日掲載)
※記事公開から日数が経過した原文へのリンクは、正常に遷移しない場合があります。ご了承ください。
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『HealthTechWatch』の視点!
今年に入ってから、米国のヘルスケアメディアで、医療から予防へのアプローチを促進する特集が頻繁に掲載されるようになってきました。今回の記事もその1つです。
利用者はもちろん、提供者にとっても医療施設は、病気や怪我をしてから訪れる場所と捉えています。予防医療のために病院に行こうと考える人は、よほどヘルスケアリテラシーが高い人ではないでしょうか!?
日本のように健康診断という仕組みがあっても、多くの人が年に1回、仕方なく行っているのが実態でしょう。会社で働いているなど、ある程度強制が働く人は毎年行くわけですが、そうでない人は、もう5年行ってないなど、意外と聞く話です。
常日頃から自分の現状をチェックし、適切な状態にメンテナンスすることは理想的ではありますが、今までそのような常識がない中では、簡単にはいかないでしょう。
しかし、NHLBI(National Heart, Lung, and Blood Institute)による調査では、米国の成人3人に1人がスマートウォッチやスマートバンドなどのウェアラブルを装着していると報告されました。
これは、もしかすると予防医療につながる可能性が出てきたのではないかと思っています。
3人に1人が何かしら健康に気を使うきっかけがあれば、そこから予防や検査のために医療施設に誘導することに現実味が出てきたと言えます。
理想を唱えるばかりでは人は動いてくれませんが、可能性ある人からアプローチをはじめ、その結果を周りの人に共有することで状況が動き出すことはあります。
予防へのきっかけ、改めて考えて見てはいかがでしょうか?
『HealthTechWatch』編集長 渡辺 武友
株式会社スポルツにて健康ビジネスにおけるマーケティングに関するコンサルティング、一般社団法人 社会的健康戦略研究所の理事として、ウェルビーイングの社会実装方法の研究を行う。またウェアラブル機器、健康ビジネスモデルに関する健康メディアでの発表や、ヘルスケアITなどで講演を行う。
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