★★注目ニュース★★ デジタルメンタルヘルスは効果的だがコストがかかる可能性がある

『HealthTechWatch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“PHTI、デジタルメンタルヘルスソリューションは効果的だがコストがかかる可能性がある”
ピーターソン健康技術研究所(the Peterson Health Technology Institute:PHTI)の新たな分析によると、うつ病や不安症に対するバーチャルソリューションは、軽度から中等度の症状を持つ人々にプラスの影響を与える可能性があることが明らかになった。しかし、一部のサービス価格は、雇用主や健康保険組合のコストを押し上げる可能性がある。
PHTIは、デジタルヘルスソリューションの独立評価機関である。本レポートでは、5,000件以上の論文を分析し、臨床アドバイザーやこの分野の専門家と連携し、うつ病や不安症の患者へのインタビューを実施した。3種類のメンタルヘルスソリューションを、臨床的有効性と経済的影響の両面から評価した。
- ユーザーが自分で取り組めるデジタル コンテンツを提供するセルフガイド・ソリューション (AbleTo、Dario、Headspace、Learn to Live、Meru Health、SilverCloud、Talkspace、Teladoc)
- 処方箋を必要とする FDA 承認済みのデジタルプログラムである処方箋デジタル治療薬(DaylightRx、Rejoyn)
- ブレンドケア・ソリューションには、セラピーとデジタルコンテンツを提供する仮想ケアチームのネットワークが含まれる(AbleTo、Brightside、Headspace、Koa Health、Lyra、Meru Health、Modern Health、Spring Health、Talkspace、Teladoc)
PHTIは、自己ガイド型ソリューションにより、他の治療を受けていない人々のうつ病や不安症状が臨床的に有意に改善され、民間保険会社の純支出が減少することを発見した。
処方箋デジタル治療薬は、他の治療法と併用することで、臨床的に有意な改善が見られることも報告された。また、治療頻度を減らすために使用すれば、コスト削減にもつながる可能性があると報告書に記載された。
一方、ブレンドケア・ソリューションは、他の2つのカテゴリーと比較して臨床的メリットが大きい。しかし、PHTIの報告によると、利用状況に関わらず、全従業員にアクセス料金を請求する現在の価格設定は、雇用主と健康保険組合の医療費支出全体を押し上げている。
「うつ病や不安症に対するバーチャルソリューションは、便利で手頃な価格、そして効果的な治療オプションを幅広く提供することで、医療へのアクセスを拡大することができます」と、PHTIのエグゼクティブディレクターであるCaroline Pearson氏は声明で述べた。「これらのソリューションを福利厚生の一環として提供する企業は、利用者一人当たりの医療費を削減し、生産性を向上させることができます。しかし、全体的なコストを管理するためには、企業はブレンドケア・ソリューションの価格を交渉し、適切な場合には利用者がより手頃な価格の治療オプションを選択できるよう支援する必要があります」
記事原文はこちら(『MedCity News』2025年5月22日掲載)
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『HealthTechWatch』の視点!
米国の法人向けヘルスケアサービスでは、メンタルヘルスの導入は当たり前のものとなり、サービスバリエーションも増えたことで、かなりの効果を生み出しています。
日本市場も、メンタル面のサポートを強化する傾向は増しているため、新たにメンタルヘルス・サービスを検討する企業も多くなっている印象です。
SNSのコミュニケーションが増したことで、コミュニケーションが手軽になったのとは裏腹に、ちょっとしたことで孤立感を感じる人も多くなり、見えないところで気づいたらメンタル疾患になってしまう人も相当数出てきていますので、予防段階からメンタルヘルス・サービスを導入すること自体は価値あるものと思われます。
しかし、医療ではない予防サービスとして提供していたとしても、隠れメンタル疾患者にサービス提供してしまうこともあります。
医療的サポートが必要な人に、容易なサポートをしたことで重篤化につながり、場合によっては死につながることもあります。
もし、サービス提供中に自殺者などが出ると、サービス提供者の責任問題にもなります。
たとえ予防までのサービスと思っても、メンタルをテーマに扱う以上、このようなリスクがあることは意識しなければなりません。
この市場に参入を考えているのならば、このようなリスクも踏まえて、事業検討を進めてください。
『HealthTechWatch』編集長 渡辺 武友
株式会社スポルツにて健康ビジネスにおけるマーケティングに関するコンサルティング、一般社団法人 社会的健康戦略研究所の理事として、ウェルビーイングの社会実装方法の研究を行う。またウェアラブル機器、健康ビジネスモデルに関する健康メディアでの発表や、ヘルスケアITなどで講演を行う。
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