★★注目ニュース★★ 東京科学大学、高齢者の歯の本数とウェルビーイングの関係を解明

里見将史

2025.04.01

『HealthTechWatch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。

今回注目したニュースはこちら!
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“高齢者の歯の本数との関係を解明”

歯科補綴物の使用がウェルビーイング向上に寄与する可能性

ポイント

・ウェルビーイングは、精神的・身体的な健康に加え、幸福感や健康状態、社会的な人間関係などを含む幅広い概念です。

・本研究では、日本全国の87,201人の高齢者を対象に、口腔の健康と多面的なウェルビーイングとの関係を検討し、現在の歯の本数および歯科補綴物(入れ歯など)の使用が、それぞれ独立してウェルビーイングと関連していることを世界で初めて明らかにしました。

・特に、歯が少ない高齢者において、歯科補綴物の使用を促進することが、全体的なウェルビーイングの向上につながる可能性が示されました。

概要

東京科学大学大学院 医歯学総合研究科 歯科公衆衛生学分野のKewei Wang大学院生、相田潤教授らの研究グループは、日本全国の65歳以上の高齢者87,201人(平均年齢74.87歳、標準偏差(SD)=6.30)のデータを用いた横断研究を実施しました。

幸福度や人生への満足度や目的意識、健康、人間関係などへの満足度を含む多面的なウェルビーイングのスコア(平均±SD)は6.77±1.64(最高スコア10)でした。歯が多い人や歯科補綴物を使用している人は、より高いウェルビーイングスコアを示しました。

具体的には、0~9本の歯を持つ人々のうち、歯科補綴物を使用している人は、使用していない人に比べてウェルビーイング指数が0.21ポイント高いことが分かりました(95%信頼区間(95% CI):0.12–0.29、P<0.001)。また、歯科補綴物を使用していない人の中では、20本以上の歯を持つ人のウェルビーイング指数が、0~9本の歯を持つ人よりも0.34ポイント高いことが確認されました(95% CI:0.26-0.42、P<0.001)。これらの結果から、歯科補綴物の使用は、歯の本数が少ないことによるウェルビーイングへの悪影響を有意に緩和することが示されました。


本研究は、日本学術振興会 科学研究費助成事業、厚生労働科学研究費補助金、JST次世代研究者挑戦的研究プログラムなどの支援を受けて実施され、その成果は2025年2月11日にJournal of Prosthodontic Research(ジャーナル オブ プロストドンティック リサーチ)のオンライン版で発表されました。

背景

人間のウェルビーイングとは、精神的・身体的な健康に加え、幸福感や健康状態、社会的な人間関係などを含む幅広い概念です。口腔の健康が幸福感などの個々の要素に影響を与えることは知られていますが、多面的なウェルビーイングとの関係性については十分に解明されていません。

歯の本数が少ないなど口腔の健康状態が悪いと、高齢者の自尊心や社会的な交流、生活の質に悪影響を及ぼし、多面的なウェルビーイングが低下する可能性があります。一方で、入れ歯などの歯科補綴物を利用することで、この低下を緩和できる可能性があります。

本研究では、日本の高齢者を対象に、口腔の健康(歯の本数および歯科補綴物の使用)と多面的なウェルビーイングとの関連性を調査しました。特に、歯の本数が少ないことが低いウェルビーイングと関連し、歯科補綴物の使用がこの関連を緩和するかどうかを検討しました。

研究成果

本研究には、平均年齢74.87歳(標準偏差(SD)=6.30)の87,201人が参加し、多面的なウェルビーイングのスコア(平均±SD)は6.77±1.64(最高スコア10)でした。歯が多い人や歯科補綴物を使用している人は、より高いウェルビーイングスコアを示しました。

具体的には、0~9本の歯を持つ人のうち、歯科補綴物を使用している人は、使用していない人と比べてウェルビーイング指数が0.21ポイント高いことが分かりました(95% CI:0.12–0.29、P<0.001)。また、歯科補綴物を使用していない人の中では、20本以上の歯を持つ人のウェルビーイング指数が、0~9本の歯を持つ人よりも0.34ポイント高いことが確認されました(95% CI:0.26-0.42、P<0.001)。
さらに、交互作用の検討により、歯科補綴物の使用は、歯の本数が少ないことによるウェルビーイングへの悪影響を有意に緩和することが示されました。

社会的インパクト

本研究は、口腔の健康と多面的なウェルビーイングとの関連性を探る初めての研究です。本研究の結果は、口腔の健康を改善し、歯科補綴物の使用を促進することが、高齢者の全体的なウェルビーイングの向上につながる可能性があることを示唆しています。

また、口腔の健康に焦点を当てた介入が、ウェルビーイングの向上において重要な役割を果たすことが期待されます。

プレスリリースはこちら(東京科学大学 2025年3月17日掲載)

※記事公開から日数が経過した原文へのリンクは、正常に遷移しない場合があります。ご了承ください。

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『HealthTechWatch』の視点!

今回取り上げたのは、口腔内の健康とウェルビーイングとの関係性に関する調査結果です。

最近は、口腔衛生、口腔環境が生活習慣病を含めた心身の健康にも大きく関係していることから、口腔ケアの重要性に注目が集まってきています。

また、口腔環境に応じたサービスの一例として認知症保障保険では、70歳時に永久歯が20本以上残っている場合、保険料が割引されるなど、歯の本数と身体のリスクの関係性も明らかなになってきています。

今回の東京科学大学の研究結果でも、歯の本数が多い人は、より高いウェルビーイングスコアが高いという結果で、口腔環境が良い状態の方がウェルビーイングにつながっていることがデータでもわかってきています。

この背景には、口腔環境が良い状態の人は、口腔ケアへの意識も働き、歯磨きを含めた口腔ケアに向けた行動がしっかりと習慣化されているのではないかと思われます。

今回の研究結果では、入れ歯などの歯科補綴物を利用している人もウェルビーイングスコアが高いという結果になっているとのことで、入れ歯などの歯科補綴物を利用することで、ウェルビーイングの低下が緩和できるようだと伝えています。

入れ歯などの歯科補綴物が必要になるケースでは、それまでの口腔環境の悪化が考えられるため、ウェルビーイングスコアの低下が考えられますが、やはり口腔環境の悪化をそのまま放っておいてしまうのではなく、しっかり治療や入れ歯などの歯科補綴物を利用することで、ウェルビーイングスコアの低下に歯止めがかかり、悪影響の緩和にすつながるということなんだと思います。

口腔ケアをしっかりとしていても高齢に伴い口腔環境は低下していくものです。
その際に、しっかりと治療も含めて口腔ケアをすることがウェルビーイングを低下させないためには必要だということです。

生活習慣病を含めた心身の健康に向けて、口腔ケアは今後ますます注目されてアプローチが増えてくると思われます。

そのためには、口腔ケアを「お口の中」だけの視点から心身に向けたアプローチ、そしてウェルビーイングという視点でいまから捉えておく必要があることを、今回の研究結果であらためて感じました。

『HealthTechWatch』編集委員 里見 将史
株式会社スポルツのディレクターとして、主に健康系ウェブサイト、コンテンツなどの企画・制作・運営を担当。(一財)生涯学習開発財団認定コーチ。

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