★★注目ニュース★★ 病院が投資ファンドに買収されると救急外来患者の死亡率が上昇!?

watanabe

2025.10.06

HealthTechWatch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。

今回注目したニュースはこちら!
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“研究:病院が投資ファンドに買収されると救急外来患者の死亡率が上昇すると判明”

ハーバード大学、ピッツバーグ大学、シカゴ大学、ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターの研究チームが発表した論文で、病院がプライベート・エクイティ(PE)ファンドに買収されると、救急外来の患者死亡率が同様の病院と比較して約13%上昇することが報告された。

この研究結果は10年間にわたって病院の成果を比較したもので、利益追求型の金融組織が所有する医療機関では患者の治療結果が悪化することを示唆している。

研究によれば、PEファンドに買収された病院の救急部門では、高齢者向け公的医療保険に加入する患者1万人の来院あたり死亡者数が7人増加したとのこと。これは、買収前の基準値から13%の上昇に相当する。

また、人員削減の具体的なデータとして、買収後の病院では救急部門の給与支出が18%、ICU(集中治療室)では16%削減された。

加えて、病院全体の常勤職員は平均で11.6%、給与支出は16.6%減少していたことも判明。研究チームは、「救急医療や集中治療のような患者との対面でのケアが中心となる現場で人員を削減することは、患者をケアする能力の低下に直結する」と述べた。

さらに、PEファンドに買収された病院では、患者を他の病院へ転院させるケースが増加し、ICUでの滞在期間が短くなる傾向も見られた。これは、人員削減によって、リスクの高い患者を治療する能力が低下したことを示唆していると考えられる。

ハーバード大学医学研究科のソン・ツィルイ准教授は「PEファンドが利益を追求する戦略として、一般的に人件費の削減が行われます。しかし、高齢で容態が急変しやすい患者にとって、こうした財務戦略は危険で、時には命に関わる結果をもたらします」とコメントした。

ソーシャルニュースサイトのHacker Newsでは、「PEファンドによって買収された病院が、そうではない病院と比べて最大17倍の医療費を請求している」「PEファンドが買収した介護施設も収容者の死亡率が高くなっていたりする」など、指摘するコメントもあった。

また、あるユーザーは「大企業のインセンティブは人類のウェルビーイングや社会の利益とあまりにもかけ離れているため、強力な消費者保護と反トラスト規制なしにこの状況を避けることは文字通り不可能です」と述べている。

記事原文はこちら(Gigazine』2025年9月26日掲載)
※記事公開から日数が経過した原文へのリンクは、正常に遷移しない場合があります。ご了承ください。

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『HealthTechWatch』の視点!

病院運営で適切な収益を上げることの難しさは、日本でも度々話題となります。国内医療機関の6〜7割が赤字経営に陥っていることは皆さんもご存知だと思います。

救急医療を提供することは、医療提供価値としては高いのですが、運営の視点でみると状況が変わります。国も救急医療に対する支援はしていますが、財政面での厳しさから救急医療を断念する医療機関もあります。

予防領域でビジネスをしていると、医療領域は体調不調者が当然のように行くところで、なおかつ手厚い保険制度のお陰で患者が利用しやすいなど、魅力的な市場に見えることがありますが、実態はそう単純ではないと言えます。

ヘルスケアに限らず、先行きの見えづらい現在では、資本主義的発想でのビジネスには限界が来ています。

例えば、ある調査では「お金に余裕がある人より、お金がなくても、別の価値に気づけている人の方がウェルビーイング度が高い」こともわかってきています。

医療も完治のために、とてつもない高額な支払いをすることが、ウェルビーイングであるとは言えないでしょう。

今こそ「自社が提供するヘルスケアにおけるウェルビーイング」を、明確にし、届けるべき価値を見直すときではないでしょうか。

『HealthTechWatch』編集長 渡辺 武友
ヘルスビズウォッチ合同会社にて共同代表CSO。健康ビジネスにおけるマーケティングに関するコンサルティングを行う。一般社団法人 社会的健康戦略研究所の理事として、ウェルビーイングの社会実装方法の研究を行う。またウェアラブル機器、健康ビジネスモデルに関する健康メディアでの発表や、ヘルスケアITなどで講演を行う。

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