★★注目ニュース★★ エンゲージメントを高めるためにテクノロジーの活用がこれまで以上に必要

『HealthTechWatch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“価値に基づくケアでエンゲージメントを高めるためにテクノロジーの活用がこれまで以上に必要”
価値に基づくケア(Value Based HealthCare:VBHC)契約に結びついた収益は増加している。最新のデータによると、米国の医療提供者への報酬のうち、定額制リスクモデルに結びついているのは14%で、3年前のわずか7%から大幅に増加している。
同時に、連邦政府の政策変更、特にメディケイドの受給資格とプランの継続性に関する政策変更により、患者の積極的なケアへの関与を維持するための取り組みが新たな緊急性を帯びてきた。
経済的リスクが高まるにつれ、多くの医療機関は、大規模で多様な患者集団全体にわたり、拡張可能かつ一貫性のある患者エンゲージメントを促進するという課題に直面している。
VBHCにおけるパフォーマンス向上の最大の障壁の一つは、医療機関が患者が健康状態を改善するための適切なステップを踏むための支援に苦戦しているときにある。
特に、医療機関がこれまで一度も受診したことがないものの、マネージドケア医療保険を通じて医師パネルに割り当てられた会員とどのように関係を構築すべきかを検討しなければならない場合に当てはまる。
これは、医療保険会社と医療提供者が協力してテクノロジーとデータ分析をより有効に活用できる分野となる。ターゲットを絞ったコミュニケーションを実現する高度なソリューションは、医療機関が年間スクリーニング率を向上させ、ケアの継続性を強化するための基盤となる。
さらに、医療提供者が患者の今後の受診に備えるための重要な情報を提供するツールは、医療提供者と患者の間でより効果的な話し合いを促進し、限られた時間を最大限に活用し、ケアのギャップを埋めるのに役立つ。
データ主導のエンゲージメントの力
ヘルスケア業界のリーダーたちはVBHCへの勢いが高まっていることを認めているものの、2024年の諮問委員会の調査では、リソース、資本、経営陣の一貫した連携に関しては、医療提供者の準備が依然として重要な課題であることが示唆された。
テクノロジーは依然として準備態勢の中核を成しており、データと分析の活用(人工知能による支援を含む)は、持続可能なリスク負担戦略の成功を左右する重要な要素であり続けるだろう。だからこそ、大手医療機関や医療保険プランは、EHRと統合し、アウトリーチを促進する高度な機能を提供する集団健康プラットフォームに注目し始めている。
例えば、患者が1年以上健康診断を受けていない場合、集団健康管理プラットフォームにアラートが送信される。患者には、電話または予約リンク経由で予約を取るよう促す、一連の安全なテキストメッセージが自動的に送信される。
さらに、このような自動化されたアウトリーチにより、患者はメディケイドの再審査や健康保険プランの再加入といった重要な時期を逃すことがなくなる。
連邦政府のガイドラインが進化し、患者が保険加入を維持する責任がますます重くなっている現在、自動化されたほぼリアルタイムのアウトリーチ機能はもはや「あれば良い」というものではなく、患者が医療を受け続けるために不可欠なものとなっている。
記事原文はこちら(『MedCity News』2025年10月10日掲載)
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『HealthTechWatch』の視点!
価値に基づくケア(Value Based HealthCare:VBHC)とは、治療行為自体ではなく、治療の質、結果に対して支払いが決まる医療保険です。
治療代でいくら、薬代でいくらと請求されるのが従来の仕組みですが、これだと本当に改善しているのかがわかりません。VBHCでは結果に対して支払うことで、的確な医療費負担になるように設計されています。
現在VBHCは多くの国で導入されていますが、日本の保険制度には導入されていません。日本では成果連動型民間委託契約方式(Pay For Success)が健保向けの健康支援などで導入がはじまっています。
VBHCに話を戻します。VBHCでは対処療法だけでなく、予防、予後までも範疇にすることで、病気にさせない、再発させないことにも取組んでいます。
今まで、健康予防と医療が別々に提供されていたものが、一体となって提供されることが望まれています。
とは言え、医療の専門家は予防の専門家ではないので、理論的には予防に何が必要であるかはわかっていても、実際の対象者に予防を提供する、対象者に予防行動をしてもらうのは、医療とは違った専門性が求められます。
記事にありますように、米国ではメディケアに力が入れられています。メディケアの対象には65歳以上のシニア層が多数を占めますので、当然若手よりもシニア層の方が疾病リスクも高まります。シニア層を病気にさせない、再発させないことは、医療費削減の観点からも重要視されているのです。
医療制度の違いはあれど、先進国としての状況は米国も日本も違いはありません。高齢比率では日本の方が多いのが実態です。
日本でも医療と健康の垣根は徐々に低くなってきていますので、VBHCの動向も参考に、これから何をするべきか、検討を深めることはとても重要と考えます。
『HealthTechWatch』編集長 渡辺 武友
ヘルスビズウォッチ合同会社にて共同代表CSO。健康ビジネスにおけるマーケティングに関するコンサルティングを行う。一般社団法人 社会的健康戦略研究所の理事として、ウェルビーイングの社会実装方法の研究を行う。またウェアラブル機器、健康ビジネスモデルに関する健康メディアでの発表や、ヘルスケアITなどで講演を行う。
- VBHC メディケア シニア層 医療保険 医療機関 成果連動型民間委託契約方式