★★注目ニュース★★ 東北大学、健康行動を支える脳の仕組みを解明

里見将史

2025.06.09

『HealthTechWatch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。

今回注目したニュースはこちら!

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”健康行動を支える脳の仕組みを解明 ─ 脳の前頭極と個別化フィードバックが若者の食生活改善とウェルビーイング向上の鍵に ─”

【本学研究者情報】
〇大学院情報科学研究科 准教授 細田 千尋

【発表のポイント】

・平均21歳の健康な大学生約50名を対象に実施した実験で、食事日記を継続的に記録し、そのフィードバックを得ることで、栄養摂取が改善するだけでなく、ウェルビーイングの向上が確認されました。

・脳の前頭極の構造が優れている参加者ほど食事日記を継続する傾向が見られ、前頭極が自発的な健康行動の維持に関与している可能性が示唆されました。

・生活習慣病予防のための健康支援プログラムや企業のウェルビーイング経営、健康経営への応用にも期待される研究成果です。

【概要】

生活習慣病の増加は社会的な課題であり、若い頃からの健康的な生活習慣が重要です。しかし、その効果が見えづらいため、健康的な食習慣を維持することは難しく、多くの人が途中で挫折してしまいます。

東北大学大学院情報科学研究科・加齢医学研究所細田千尋准教授と花王株式会社の共同研究グループは、将来の健康に向けた良い習慣を継続させる脳の仕組みに注目し、支援する方法を検討しました。

これまでの研究により、脳の前頭極という部位が、近い将来に向けた行動の維持(GRIT)に関連することは示唆されていましたが、遠い将来の健康目標に対する行動継続への関与の詳細は不明でした。

そこで前頭極の構造と健康行動の持続力との関連を調べるとともに、各個人に合わせた個別化フィードバックによる食習慣改善の後押しが可能かを検証しました。

その結果、個別化フィードバックが長期的な健康行動の維持とウェルビーイングの向上に有効であることを実証するとともに、前頭極の脳構造が行動維持能力に関与することを明らかにしました。

本成果は2025年5月2日付で科学誌Scientific Reportsに掲載されました。

プレスリリースはこちら(国立大学法人 東北大学 2025年5月21日掲載)
 
※記事公開から日数が経過した原文へのリンクは、正常に遷移しない場合があります。ご了承ください。

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『HealthTechWatch』の視点!

今回取り上げたのは、東北大学が発表した健康行動を支える脳の仕組みを解明し、 脳の前頭極と個別化フィードバックが若者の食生活改善とウェルビーイング向上の鍵になっているという研究結果です。

これまで、行動の継続や習慣化を含めた行動変容に向けた様々なアプローチの効果に関する調査を目にしてきましたが、今回の東北大学が発表では、脳構造が行動維持能力に関与することについて調査しており、その脳の構造と具体的なアプローチの効果を分析している点は興味深い内容です。

今回の調査で実施した実験では、食事日記を継続的に記録するというシンプルな行動であり、一般的には食事記録は面倒なので継続するのが難しい行動の一つに設定されています。

結果として、脳の構造との関係では、脳の前頭極の構造が優れている参加者ほど食事日記を継続する傾向が見られ、前頭極が自発的な健康行動の維持に関与している可能性が示唆されたとしています。

では、脳の前頭極の構造が優れている点と具体的なアプローチの関係では、食事記録に対する個別化フィードバックが長期的な健康行動の維持とウェルビーイングの向上に有効であり、前頭極の脳構造が行動維持能力に関与することが明らかになったということです。

食事の記録を含めて、多くの記録サービスでは記録することが前提となっており、記録を起点にしたサービスになっているのが一般的です。

また、行動の継続が難しい記録であるにも関わらず、記録してくれたことに対してサービス側からの反応では、グラフやデータの集計の提示程度であったり、一般的なシステムからのコメントの提示で、せっかく記録をしてくれた人に対して、しっかりと向き合ってなんらかの反応、フィードバックを返えせていないものが多いです。

今回の調査結果では、食事記録に対して個別化フィードバックが長期的な健康行動の維持とウェルビーイングの向上に有効であり、脳構造の面からみても行動維持能力に関与することが明らかになりました。

食事記録を含めて記録サービスを提供している中には、いろいろなパターンでコメントを自動で表示してフィードバックしているサービスもありますが、この調査結果からのポイントとしてはやはり「個別化」という点になってきます。

提供されるコメントがしっかりと自分に向けられているかどうかといった、受け手側の脳構造に関与できているかどうかなんだと思います。

個別化されたフィードバックがなぜ行動の継続に大切なのか、脳構造の視点で発表された今回の調査結果は、今後の行動変容のアプローチに参考になる情報だと思います。

『HealthTechWatch』編集委員 里見 将史
株式会社スポルツのディレクターとして、主に健康系ウェブサイト、コンテンツなどの企画・制作・運営を担当。(一財)生涯学習開発財団認定コーチ。

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