★★注目ニュース★★ 混乱期における従業員とのコミュニケーション

『HealthTechWatch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“混乱期における従業員とのコミュニケーション”
人間は確実性を求める。透明性があり思慮深いメッセージであっても、曖昧であれば価値が損なわれてしまう。
残念ながら、バイオテクノロジーと製薬業界では依然として高いレイオフ率が続いている。そして、事業再編。こうした出来事が起こると、誠実で、安心感を与えるメッセージの作成に苦労することがよくある。従業員、患者団体、投資家は皆、当然ながら疑問を抱くこととなる。
会社のパイプラインにはどのような影響を受けるのだろうか?データや規制のタイムラインは変更されるのか?
人員削減に先立ってコミュニケーションプランを作成する際、すべての答えがわからない、あるいは将来がどうなるか正確に把握できないこともある。
それでも大丈夫!確実性を確保できない場合は、プロセスへの信頼を高めることが重要だ。従業員向けの月次会社情報の更新や、投資家や患者がパイプラインの進捗状況についてより詳しく知ることができるタイムラインなど、対象者が信頼できる情報を提供していく。
同様に、公平性を求める気持ちは人間の脳に深く根付いている。組織再編は、会社を離れる人にとっても、残る人にとっても、決して完全に公平であるとは感じられない。こうした難しい決定を伝える際には、プロセスとその結果について透明性と誠実さを保つことが不可欠となる。
組織再編の目的、決定の経緯を明確に示し、会社が離職する従業員をどのようにサポートするか、そして従業員が離職する同僚をどのようにサポートできるかを具体的に説明していく。共有できる詳細の範囲は法的に定められているが、プロセスの概要を大まかに説明することで、透明性が高まり、経営陣への信頼を築くことができる。
現状では、コントロールできないと感じるのは当然だ。バイオテクノロジー企業は資金調達に苦戦し続け、長期的な存続が危ぶまれている。規制環境は絶えず変化し、全米の研究所や研究者は前例のない資金削減に直面していまる。
しかし、自分の環境をコントロールしているという感覚を持つことは、ストレスレベルを軽減し、安定感、自信、そして精神的な幸福感を育む上で重要な役割を果たすだろう。
優れたコミュニケーション能力を持つ人は、コントロール感覚が失われたときに生じる課題を理解しており、自律性を高めることでその影響を軽減しようと努める。従業員にとって、これは特に重要だ。
懸念やアイデアを表明できる正式なフィードバックメカニズムを構築することで、彼らがコントロール感覚を身に付けられるように支援していく。マネージャーには、変化が心理的に及ぼす影響について研修を行い、自律性の最大の敵であるマイクロマネジメントを避けるよう促すことも検討しておく。
エンゲージメントとつながりの機会を増やすことは、精神的な幸福感の向上にもつながる。なぜなら、帰属意識は人間の根源的な欲求と言える。
不確実性と変化の中でもコラボレーションを可能にするには、従業員が同僚とのつながりを感じることが重要となる。
バーチャルでハイブリッドな現代社会において、Zoomを使ったチームビルディングは必ずしも容易ではないが、これまで以上に重要となる。オフィスでのイベントに加えて、バーチャル従業員の繋がりを保つために、オンラインのハッピーアワーやクイズ大会なども忘れずに開催すべきだ。
これを最も効果的に実践している企業は、チームビルディングの機会を活用して、従業員の仕事への目的意識を回復させている。
私のクライアントの1社では、彼らが支援する患者コミュニティのメンバーを招いた炉辺談話会(くつろいだ環境での会話)を定期的に開催し、従業員に自分の仕事の重要性を再認識する機会を提供している。目的意識を持つことは、モチベーション、満足度、そして全体的なパフォーマンスに大きな影響を与える可能性がある。
同様に、投資家、患者、その他の外部関係者に対しても、大きな節目となるイベント以外でも積極的に関与することを忘れてはいけない。四半期ごとの投資家向け電話会議や患者向けアドバイザリーミーティングは、サービス提供先のコミュニティのメンバーと交流する唯一の機会であってはならない。年間カレンダーを計画する際には、投資家と患者を定期的に結びつける方法について、創造的に考えるべきだ。
最後に、1対1のコミュニケーションの役割を過小評価してはいけない。
研究によると、従業員にとって、マネージャーはコミュニケーション手段として最も好まれる存在だ。実際、マネージャーは上級管理職よりも従業員から信頼を得ていることが多い。
マネージャーには、変化の時代において従業員を導くための準備を整えるための話し合いのポイントやツールキットを提供する。投資家、取締役、そして患者リーダーと定期的に連絡を取り、彼らの懸念を聞き、進捗状況を報告する。強固なコミュニケーション基盤を築くことは、不確実な時代を乗り越える力となるだろう。
記事原文はこちら(『MedCity News』2025年8月1日掲載)
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『HealthTechWatch』の視点!
今回の記事は、米国の多くの企業が取り入れてきているウェルビーイングプログラムを医療、製薬業界ならではの視点で説明、アドバイスしたものです。
さすがMedCity News、よい視点だと思いました。
現在は不確定要素が多い時代であり、今までならできた予測がつきにくいことで、急遽、大胆な決断を迫られる場面も増えてきているのではないでしょうか。
以前との大きな違いとして言えるのは、全世界的に進む少子高齢社会です。
企業が大胆な決断をしなければ事業の存続に影響することがありますが、その決断により影響を受けるのはすべてのステークホルダーです。
特に今後も働いてもらいたい戦力となる従業員にも悪い感情を抱かせることにもなります。
以前と違い、去ってしまった優秀な人材を簡単に埋めることもできなくなってきます。
ウェルビーイングプログラムで重要視するのが、帰属意識であり、その手段としては良質なコミュニケーションです。
コミュニケーションは取れば何でもいいとはいきません。従業員からすれば、新たなコミュニケーション機会は、場合によっては余計な時間が増えるだけとも思われることもあり、会社命令だからと、形だけ参加する人もいるでしょう。
その企業における良質なコミュニケーションとは、時期や場所、仕事の状況など、多くの要素を踏まえて、今取るべき最善策でなければないません。
その最善策も、1回でいきなり成功ではなく、ステップを踏む必要があるかもしれません。
その企業の文化形成に活かせるものが、求められるウェルビーイングプログラムとなります。
今後、企業だけでなく、すべての人の関わりに共通することとなります。ヘルスケアビジネスにおいても必須となる要素と思って取り組んでいただきたいです。
『HealthTechWatch』編集長 渡辺 武友
ヘルスビズウォッチ合同会社にて共同代表CSO。健康ビジネスにおけるマーケティングに関するコンサルティングを行う。一般社団法人 社会的健康戦略研究所の理事として、ウェルビーイングの社会実装方法の研究を行う。またウェアラブル機器、健康ビジネスモデルに関する健康メディアでの発表や、ヘルスケアITなどで講演を行う。
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